気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

零からの栄光

<第2次世界対戦で活躍した二式大艇、紫電改といった軍用機を開発した川西航空機(現・新明和工業)の物語です。
前半は、二式大艇、紫電改の開発秘話。そして後半(戦後)は、PS飛行艇の開発秘話。
後半の、新明和工業が企業として利益を上げるために変わらざるを得なかったくだりは、ビジネス書としても大いに得るものがあると思います。

2つの物語ともに、飛行機開発にとり憑かれた技術者たちの熱い思いと不屈の精神が心地よく伝わってきます。開発に情熱を懸けられる技術者は幸せだなーと思います。
紫電改は、"「紫電改」に比べれば、かつての名機「零戦」も、練習機に毛の生えた程度にしかみえなかった"というくらいの名機で、グラマン・ヘルキャットをもしのぐ性能を持っていました。
これほどまでの傑作を生み出せる人々が日本にいたという事実は、僕たち日本人の誇りですね。

この本を読んでものすごく気に入った箇所があるので、そこを抜粋させていただきます。

一度、菊原が
「なぜ、うちはエンジンをつくらないのですか」
と竜三(社長)に聞いたことがあった。そのとき、竜三は答えた。
「もしうちでつくれば、きみたちは、自分の設計した飛行機にうちのエンジンを積まねばならぬと思うだろう。それよりも、どの社のエンジンでも自由に選択できるほうがよいではないか」
その通りであった。菊原たちにしてみれば、それだけ自由な設計ができた。

なるほど、エンジンは飛行機にとって重要な要素に違いないですが、それだけで優劣が決まるものではなく、そこに設計者の腕の見せ所があるということですね。そして、技術に対してフリーであれ、ってことだと思います。これは、飛行機に限らずどんな技術にも通じることだと思います。


※どうも、僕が読んだ文庫本はすでに絶版?らしいので、 『零からの栄光 城山三郎
昭和の戦争文学 第三巻』へのリンクを貼っておきました。