森は知っている - 吉田修一
「太陽は動かない」は未読。「太陽は動かない」がエピソードIIだとすると、本作は、エピソードI。「太陽は動かない」の存在を知らなかったので、物語がどう展開するのか全く読めずにハラハラドキドキで、引き込まれました。
柳との友情、詩織との恋を絡ませて、産業スパイへと育てられていく高校生・鷹野の成長が、産業スパイとして生きて行く覚悟を決めるまでのエピソードを描いたエンターテイメント。
鷹野の生い立ちは、数年前の監禁されたまま亡くなってしまった悲惨な幼児虐待事件を思い出しました。
「ここよりも、もっといい場所あるよな」という鷹野の言葉が心に残ります。
著者の「死ぬな、生きろ」という強いメッセージを感じる作品でした。
ただ、水道事業の民間参入についてはもう少し詳しく書いて欲しかった。この部分が腑に落ちなかったので、なぜ情報を盗み出すのかという点で、納得感がいまいち弱かったような気がします。