気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

用心棒日月抄 - 藤沢周平

約2年ぶりに読む藤沢作品。面白い! 

訳あって脱藩し江戸で用心棒をして生活する青江又三郎の活躍を描いた連作時代小説。ところどころにユーモアを交えた語り口が実に読みやすい作品でした。

忠臣蔵と絡めることで徐々に緊張が高まっていくのも素晴らしいと思います。江戸に暮らす人々の視点から忠臣蔵を描いているのが新鮮でした。

脇役の吉蔵、細谷、おりんもいい味出してます。

最後は服藩して東北の小藩へ戻った又三郎ですが、続編では吉蔵、細谷らとの再会もあるのでしょう。是非読みたいですね。 

 

用心棒日月抄 (新潮文庫)

用心棒日月抄 (新潮文庫)

 

 

闇のよぶ声 - 遠藤周作

自炊してiPhoneで再読。

遠藤周作にしては珍しいミステリー小説です。ある若い女性が神経科医の会沢を訪ねて来るところから物語は始まります。三人のいとこが謎の失踪し次は自分なのかと不安にさいなまれる婚約者の精神状態を心配して、彼女は病院を訪れるのですが、その後思わぬ展開が待っています。

ミステリー小説とは言え「ふかい海の底」のような心の闇を描いたこの作品は、他の遠藤周作の作品と同様いろんなことを考えさせられます。

戦争中に行われた悲惨な出来事の復讐のために行われる恐ろしい犯罪が明るみになった時には、なんとも言えぬ暗く哀しい気持ちになりますが、とても良い作品だと思います。

「人間の心は、まるで深い深い海のようなものでしてね。... その底は真暗で沈黙しとるんです。しかし、ただ沈黙しとるんじゃない。表面では想像もできなかったような意外な秘密や謎が、その心という暗い海の底にかくれていましてね。」と語る神経科医の会沢のセリフが印象的です。

闇のよぶ声 (ぶんか社文庫)

闇のよぶ声 (ぶんか社文庫)

 

 

 

槐(エンジュ) - 月村了衛

月村了衛さんの作品初読みです。

これほど夢中になって本を読んだのは、本当に久しぶりです。実に面白い作品でした。

夏休み恒例のキャンプに出かけた中学生7名が、武装した半グレ集団の抗争に巻き込まれてしまいます。最初の50ページは、なんのことはない普通の中学生のお話ですが、序盤を過ぎると一気に緊迫感がMAXになり、そのテンションのまま最終ページまで怒涛の展開です。残虐なシーンもありますが、そんなことはどうでも良いと思えるくらいのめり込んでしまいました。

単に面白いだけではなく、胸にぐっとくる感動が伴ったこの作品は、間違いなく第1級のエンターテイメント作品ですね。もし続編が出るのならば、ぜひ読みたいです。 

 

槐(エンジュ)

槐(エンジュ)

 

 

秋月記 - 葉室麟

葉室麟さん、初読み

九州の小藩秋月藩の財政再建に奔走した「間小四郎」の半生を描いたこの作品、期待以上でした。 

家老宮崎織部の専横を正すために、志を同じくする仲間たちと立ち上がり、いわゆる「織部崩れ」を為すまでと、その後の小四郎の苦悩の対比が実に良かった。

自分が正しいと信じた道を他人の目を気にせずに、ひたすらまっすぐに貫いていく主人公間小四郎の姿に心うたれました。

伊達騒動を題材にした山本周五郎氏の「樅の綺は残った」を思い起こしました。

他の作品も読んでみようと思います。でも積読本がまだまだあるからなー。

 

秋月記 (角川文庫)

秋月記 (角川文庫)

 

 

男たちの経営 - 城山三郎

自炊して iPhone で再読。内容を完全に忘れていたので、初めて読むような新鮮さがありました。

花王の創業から始まり、同族経営から脱却し近代化するまでの実名企業小説。実名ということで、小説としては制約が多いためか、事実の羅列っぽい感じが否めませんが、嘘のないストーリーは力があります。

はじめは創業者が苦労しながら経営を軌道にのせる話かと思ったら、すぐに息子の代に話に移ってしまいます。そうか、この2代目社長が大胆な改革をして活躍する話なんだ、と思ったて読んでいたら、そうではありませんでした。分社化された「日本有機株式会社」が、親会社を吸収し、花王の基礎を築くという話でした。

やはり企業は経営者に大きく左右されるんだな思うとともに、時代の逆風に打ち勝つには、反骨精神にあふれた丸田のような存在もまた必要なのだと改めて思った。

 

男たちの経営 (角川文庫 緑 310-16)

男たちの経営 (角川文庫 緑 310-16)