気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

闇のよぶ声 - 遠藤周作

自炊してiPhoneで再読。

遠藤周作にしては珍しいミステリー小説です。ある若い女性が神経科医の会沢を訪ねて来るところから物語は始まります。三人のいとこが謎の失踪し次は自分なのかと不安にさいなまれる婚約者の精神状態を心配して、彼女は病院を訪れるのですが、その後思わぬ展開が待っています。

ミステリー小説とは言え「ふかい海の底」のような心の闇を描いたこの作品は、他の遠藤周作の作品と同様いろんなことを考えさせられます。

戦争中に行われた悲惨な出来事の復讐のために行われる恐ろしい犯罪が明るみになった時には、なんとも言えぬ暗く哀しい気持ちになりますが、とても良い作品だと思います。

「人間の心は、まるで深い深い海のようなものでしてね。... その底は真暗で沈黙しとるんです。しかし、ただ沈黙しとるんじゃない。表面では想像もできなかったような意外な秘密や謎が、その心という暗い海の底にかくれていましてね。」と語る神経科医の会沢のセリフが印象的です。

闇のよぶ声 (ぶんか社文庫)

闇のよぶ声 (ぶんか社文庫)