気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

敗れざる者たち

前々から読もうと思っていたのですが、やっと読むことができました。
評判どおりの内容でした。
スポーツ選手たちの栄光と挫折を描いたルポルタージュで、昭和48年〜昭和51年に書かれた作品群です。題名は「敗れざる者たち」ですが、ここで描かれている多くは敗れ去っていった人たちの話です。
その世界の頂点に上りつめた人、あるいは、もう少しで手が届くところまで行った人たちが、もがき苦しむ姿になんとも言えない哀しさ切なさを感じると同時に、彼等も自分と同じく弱い人間なんだということを痛感させられます。
サクセスストーリーだったら、これほど心を揺さぶられることはないと思います。

ボクサー「カシアス内藤」を描いた『クレイになれなかった男』ではこんな文章で締めくくられています。

「人間は、燃え尽きる人間と、そうでない人間と、いつか燃え尽きたいと望み続けつ人間の3つのタイプがあるのだ。... 望みつづけ、望みつづけ、しかし”いつか”はやってこない。内藤にも、あいつにも、あいつにも、そしてこの俺にも・・・」

この文章が僕の胸に突き刺さりました。僕もいつかは燃え尽きることができるのだろうか...

敗れざる者たち (文春文庫)

敗れざる者たち (文春文庫)