気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

夢からの脱走 - 小松左京

自炊してiPhoneで再読。

12編の短編が収められています。戦争を題材にした「召集令状」と「夢からの脱走」は、村上龍の「五分後の世界」と通じるものがあり恐ろしい話でした。「三本腕の男」は世の中を見通す力に脱帽。そして、タイムパラドックスを扱った「愚行の環」、人工知能に育てられる青年の話「おやじ」、場嵐(フィールド・ストーム)で別世界に来てしまった男女が自分の世界に戻ろうとする「穴」など、どれも小松左京の凄さが伝わって来きます。今の世にも十分に通じる話ばかりでした。

 

ここ数年、昔読んだ本を再読する機会が多いのすが、読む本読む本、全く内容を覚えていません。ほんと自分の記憶力のなさに唖然とします(笑)。まあ、だからもう一回新鮮な驚きや感動が待っているのですが...

 

夢からの脱走 (新潮文庫 こ 8-6)

夢からの脱走 (新潮文庫 こ 8-6)

 

 

レオナルドの扉 - 真保裕一

レオナルド・ダ・ヴィンチが遺した秘密のノートを巡り、イタリアの小村に住む若き時計職人ジャンが活躍する夢と冒険の物語。

作者があとがきで書いているように、まるでアニメの原作を読んでいるようでした。敵役のビクトールバレルが主人公ジャンの行く先々に現れるというご都合主義もアニメの原作だと思えば許せるか。

実際アニメになったら面白いと思うし、十分に楽しめたが、もう少し大人の話にしてほしかったというのが本音。

この小説の対象年齢は中学生くらいでしょうか。

レオナルドの扉

レオナルドの扉

 

 

夢魔の標的 - 星新一

星新一が書いた初の長編SFホラー。星新一の得意とするショートショートと同様とても読みやすい文章でした。

仕事の相棒である腹話術の人形・クルコが自分の意思とは関係なく突然勝手にしゃべり出す。自分の声なのに自分の意思ではないという不思議な現象に悩まされる主人公。なぜクルコが暴走を始めたのか、なんとかその理由を探り解決しようとするが、症状は重くなっていくばかり...  正体がなかなか分からないクルコが不気味でした。

これからどうなっていくんだろう?という興味が最後まで途切れずに、それなりに楽しめましたが、ショートショートのようなキレは感じられませんでした。

 

夢魔の標的 (新潮文庫 ほ 4-13)

夢魔の標的 (新潮文庫 ほ 4-13)

 

 

長いお別れ - 中島京子

アルツハイマー認知症を発症した元中学校長・東昇平とその家族の10年の物語。

こういった環境に置かれたことはない僕には想像をはるかに超えた苦労の連続。そんな中、昇平を介護する妻曜子の前向きでくじけない姿勢は本当に素晴らしい。自分が同じ立場なら前向きに過ごせるのだろうかと考えてしまいます。

ラストの孫と学校の先生とのエピソードがとても秀逸。最後はしみじみと穏やかな気持ちになりました。

 重いテーマですがユーモアを交えた語り口で認知症と向き合う家族の日常を描き出したこの作品、読んでよかったと思います。

 

長いお別れ

長いお別れ

 

 

 

魔法飛行 - 加納朋子

ななつのこ』の続編。

短大生駒子の日常に起きる不思議を綴った連作短編ミステリー。

駒子の周りで起こる謎を綴った物語に、恋人の瀬尾さんが手紙による返信で謎解きをするという形式。

なんとも言えないみずみずしい感性に今回もやられました。切ないけれど暖かい。とてもいい読後感。

最初の話「秋、りん・りん・りん」で登場した茜さんの謎が最後に解けてスッキリです。そして瀬尾さんの推理力には脱帽です。ああ、駒子に会いたい。

駒子シリーズ第3作の『スペース』もいつか読みたいと思います。

 

魔法飛行 (創元推理文庫)

魔法飛行 (創元推理文庫)