気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

2014-01-01から1年間の記事一覧

エスケイプ/アブセント - 絲山秋子

女性が書いたとは思えない文章に脱帽です。 闘争と潜伏にあけくれ20年を棒に振った活動家の主人公(江崎正臣)が活動家から足を洗い妹が経営する託児所を手伝うことを決心するのですが、その新しい人生を始める前の1週間ほどの短い旅の様子を描いています。 …

マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust 〔完全版〕 - 冲方丁

マルドゥック・スクランブルの最終巻。 前半は前巻につづいてカジノシーン。バロットとアシュレイとのブラックジャックのカードバトルはとても読み応えがあった。 そして後半は、ボイルドと繰り広げる息も付かせぬ死闘。ただ、ボイルドの重力を制御する能力…

知の逆転 - 吉成真由美

たまには小説以外の本も読んでみようと思い読んだ本。現代を代表する知の巨人6名へのインタビュー集です。 『銃・病原菌・鉄』のジャレット・ダイアモンド、現代言語学の父のノーム・チョムスキー、『レナードの朝』の神経学者オリーバー・サックス、人工知…

ふくわらい - 西加奈子

初の西加奈子作品。好き嫌いのわかれる作品だと思いますが、僕は完全にやられました。ありきたりな感想ですが、実に良かったです。 作家さんの名前からふんわりとした感じの小説を書く人かなと勝手に思ってましたが、全然違いました。 他人と交わるのがそれ…

三国志(七) 望蜀の巻 - 吉川英治

この巻は赤壁の戦いから始まり、劉備と呉との政略結婚、そして曹操と西涼軍との戦いと続きます。 西涼軍の馬超はいい戦いをしたと思いますが、曹操の方が一枚上手でした。いつも思うのですが曹操は本当に運の強い男です。負けても負けても生き残りますね。 …

マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustion〔完全版〕 - 冲方丁

この巻もバロットとボイルドの激しい撃ち合いがあるのかと想像していましたが、まったく違いましたね。前半の楽園部分はちょっと退屈でしたが、後半の緊迫感あふれる手に汗握るカジノシーンは最高でした。一巻目が力と力の戦いならば、この二巻目は知略戦・…

三国志(六) 赤壁の巻 - 吉川英治

この巻は、長坂の戦いにおける劉備の敗走から、赤壁の戦いにいたるまでの話。副題は「赤壁の巻」ですが、赤壁の戦いは次の巻に持ち越し。 前半は何と言っても趙雲の活躍、特に阿斗救出が読み応え満点。関羽、張飛の影に隠れがちな趙雲ですが、これで一気に彼…

ハピネス - 桐野夏生

非常に興味深く一気読みしました。男である僕にはこの話に出てくる女性たちがどこまでリアリティを持っているのか判断が出来ませんが、ここに登場する他人との優劣を気にしながら生活する若いママたちの姿は、都会に生きる若い母親の一面を表しているのだと…

マルドゥック・スクランブル The 1st Compression〔完全版〕- 冲方丁

『光圀伝』『天地明察』の冲方丁が、それまでどんな小説を書いていたのか興味があって第24回日本SF大賞を受賞した『マルドゥック・スクランブル』を読んでみました。 この作品は、2nd、 3rdと続く事は知っていたのですが、その巻ごとにある程度話が完結する…

三国志(五) 孔明の巻 - 吉川英治

この巻は大きく話が動きましたね。劉備と関羽の再会、孫策の死、曹操の河北平定、劉備と徐庶との出会いと別れ。そして諸葛孔明の登場。いわゆる三顧の礼で孔明のところでこの巻は終わり。孔明の活躍は次巻からということですね。 それにしても前巻もそうでし…

ローカル線で行こう! - 真保裕一

いわゆるお仕事小説かと思っていたら、ちょっと違いました。 赤字続きのローカル線・もりはら鉄道の新社長になった若い女性社長が、どんな風に会社を再建していくのか、それにとても興味があったのですが、再建改革があまりにもとんとん拍子で進んで行きます…

薬指の標本 - 小川洋子

収録されている「薬指の標本」「六角形の小部屋」共に小川洋子さんらしい実に不思議な雰囲気を持った作品です。二作品とも結末があるようで無い、続きを想像してしまうそんな終わり方もいいなーと思っています。 「薬指の標本」は、物や体の一部への異常な執…

三国志(四) 臣道の巻 - 吉川英治

この巻あたりから俄然面白くなってきた。 戦乱の世の負けたものの定めとは言え、呂布の最後はなんとも可哀そう。曹操の残酷無比な所業と優秀な家臣を厚遇する態度のギャップには驚かされる。劉備は仁徳だけではないしたたかさで生きながらえる。そしてこの巻…

村田エフェンディ滞土録 - 梨木香歩

今から約100年前、考古学研究のためにトルコに留学した村田青年の下宿先での様々な出来事が不思議な雰囲気で描かれれている小説。 風習、文化、宗教の違いを超えて、トルコ人、ギリシャ人、ドイツ人、イギリス人などとの交流が、静かに淡々と語られていきま…

64(ロクヨン) - 横山秀夫

県警の刑事から広報官に異動になった男の視点から描く骨太の警察小説。 前半は、マスコミ対警察、刑事部対警務部、キャリア対ノンキャリア、家庭対仕事などの対立軸のなかで主人公三上が苦しみもがき葛藤する姿が描かれます。三上の心の声が僕の心を強く揺さ…

2013年 心に残った本 ベスト10

2013年に読んだ本は44冊(14867ページ)でした。2012年は、33冊、11977ページでしたから、冊数でもページ数でも大幅に2012年を上回りました。 僕の中でのベスト10は、以下の10冊です。 1. 永遠の0 -百田尚樹 2. 戻り川心中 - 連城三紀彦 3. 八日目の蝉 - 角…

桜ほうさら - 宮部みゆき

宮部みゆきの時代小説は、程よい軽さと緊張感のバランスが良く、すいすいと読んで行けます。 人間の心の闇を描いた最終話の盛り上がり方、緊迫感はさすがです。主人公・笙之介と和香の会話がこころを和ませてくれますし、あのエピソードがここに繋がってくる…

三国志(三) 草莽の巻 - 吉川英治

前半は孫策、後半は呂布と曹操が中心に話が進みます。 孫策の若くエネルギッシュな姿は読んでいて痛快。魅力的な人物として描かれています。 曹操は負けても負けても生き延びるその運の強さに脱帽です。一方の呂布は... 運不運もあるけど人を引きつける力の…