気ままな読書ノート

日本の小説を中心に読んだ本の感想を書いています。時々IT関連本や本の自炊の話題も。最近は自炊した書籍をiPhoneで再読することも多いです。

マルドゥック・スクランブル The 1st Compression〔完全版〕- 冲方丁

『光圀伝』『天地明察』の冲方丁が、それまでどんな小説を書いていたのか興味があって第24回日本SF大賞を受賞した『マルドゥック・スクランブル』を読んでみました。 この作品は、2nd、 3rdと続く事は知っていたのですが、その巻ごとにある程度話が完結する…

三国志(五) 孔明の巻 - 吉川英治

この巻は大きく話が動きましたね。劉備と関羽の再会、孫策の死、曹操の河北平定、劉備と徐庶との出会いと別れ。そして諸葛孔明の登場。いわゆる三顧の礼で孔明のところでこの巻は終わり。孔明の活躍は次巻からということですね。 それにしても前巻もそうでし…

ローカル線で行こう! - 真保裕一

いわゆるお仕事小説かと思っていたら、ちょっと違いました。 赤字続きのローカル線・もりはら鉄道の新社長になった若い女性社長が、どんな風に会社を再建していくのか、それにとても興味があったのですが、再建改革があまりにもとんとん拍子で進んで行きます…

薬指の標本 - 小川洋子

収録されている「薬指の標本」「六角形の小部屋」共に小川洋子さんらしい実に不思議な雰囲気を持った作品です。二作品とも結末があるようで無い、続きを想像してしまうそんな終わり方もいいなーと思っています。 「薬指の標本」は、物や体の一部への異常な執…

三国志(四) 臣道の巻 - 吉川英治

この巻あたりから俄然面白くなってきた。 戦乱の世の負けたものの定めとは言え、呂布の最後はなんとも可哀そう。曹操の残酷無比な所業と優秀な家臣を厚遇する態度のギャップには驚かされる。劉備は仁徳だけではないしたたかさで生きながらえる。そしてこの巻…

村田エフェンディ滞土録 - 梨木香歩

今から約100年前、考古学研究のためにトルコに留学した村田青年の下宿先での様々な出来事が不思議な雰囲気で描かれれている小説。 風習、文化、宗教の違いを超えて、トルコ人、ギリシャ人、ドイツ人、イギリス人などとの交流が、静かに淡々と語られていきま…

64(ロクヨン) - 横山秀夫

県警の刑事から広報官に異動になった男の視点から描く骨太の警察小説。 前半は、マスコミ対警察、刑事部対警務部、キャリア対ノンキャリア、家庭対仕事などの対立軸のなかで主人公三上が苦しみもがき葛藤する姿が描かれます。三上の心の声が僕の心を強く揺さ…

2013年 心に残った本 ベスト10

2013年に読んだ本は44冊(14867ページ)でした。2012年は、33冊、11977ページでしたから、冊数でもページ数でも大幅に2012年を上回りました。 僕の中でのベスト10は、以下の10冊です。 1. 永遠の0 -百田尚樹 2. 戻り川心中 - 連城三紀彦 3. 八日目の蝉 - 角…

桜ほうさら - 宮部みゆき

宮部みゆきの時代小説は、程よい軽さと緊張感のバランスが良く、すいすいと読んで行けます。 人間の心の闇を描いた最終話の盛り上がり方、緊迫感はさすがです。主人公・笙之介と和香の会話がこころを和ませてくれますし、あのエピソードがここに繋がってくる…

三国志(三) 草莽の巻 - 吉川英治

前半は孫策、後半は呂布と曹操が中心に話が進みます。 孫策の若くエネルギッシュな姿は読んでいて痛快。魅力的な人物として描かれています。 曹操は負けても負けても生き延びるその運の強さに脱帽です。一方の呂布は... 運不運もあるけど人を引きつける力の…

八日目の蝉 - 角田光代

読み始めてすぐに主人公に感情移入。誘拐が犯罪だとわかっていても犯人の希和子に共感し、捕まらないでと思う自分がいました。 とはいえ、この犯罪の一番の被害者は、誘拐された乳飲み子の薫。第2部は大学生になったその薫の視点から物語が描かれますが、心…

三国志(二) 群星の巻 - 吉川英治

一巻は、「誰々がなになにした」「どこでなにがあった」という出来事の羅列という感じがしないでもありませんでしたが、やっとエンジンがかかってきた感じ。この「群星の巻」は、力と力の正面きっての戦いよりは、騙しあい 、悪巧み、裏切りなど権謀術数な物…

冬きたりなば - 星新一

21編の短編が収録。 比較的初期の作品が収録されているようです。そのせいか、作風にまだ星新一らしさが出ていないものもあり、逆に興味深かったです。ただ、どの作品にも意外な結末が用意されているところはさすが。時間があいた時に読むのにちょうど良いで…

No.6 #8 - あさのあつこ

第8巻も一気読みでした。 これまでの流れである程度予想できていたとはいえ沙布が可哀そう。紫苑は随分成長しましたね。ネズミはどうなるんだろう。次の最終巻でどういう結末が待っているのか楽しみです。 ジュブナイル小説ですが大人も楽しめます。そして、…

三国志(一) 桃園の巻 - 吉川英治

北方謙三の三国志とは随分と趣を異にしています。ちょっと想像していたものとは違っていました。三国志の主人公の一人である劉備玄徳には荒々しいところがないのが気になります。世の乱れを正し人々を救うという大志がいまいち感じられません。そのせいか感…

御先祖様万歳 - 小松左京

自炊してiPhoneで再読。 表題作「御先祖様万歳」を含む13作品が収録された小松左京のSF短編集。 さすがに古くささを感じるものもあるが、多くが昭和38年ごろに書かれたことを考えると凄いと思います。 収録されている13作品どれもが秀逸。特に、以下の4作品…

Sony Reader T3Sを購入して一ヶ月経ちました

Sony Reader T3Sを(オンラインのソニーストアで、ブックカバーも一緒に)購入して、1ヶ月が過ぎました。 購入する際は、Kindle PW にするか、koboにするか、Sony Readerにするか迷ったのですが、カバーを付けても200gという軽さと日本のメーカーに頑張ってほ…

留学 - 遠藤周作

留学を題材にした三部作。どれも重たい内容です。 「ルーアンの夏」「爾も、また」は、それぞれ時代は違いますが、西洋文化と日本文化の壁に苦しみ挫折する主人公の姿がなんとも言えずやりきれない気持ちになります。留学の経験はありませんが、主人公の心情…

光圀伝 - 冲方丁

水戸光圀というと、TVドラマの黄門様のイメージが強いですが、ここには新しい光圀像がありました。武力で制圧する政治から文治政治へと移り変わろうとする中で、時代を力強く生きた光圀の一生が描かれています。 読耕斎、紋太夫、佐々、泰姫、左近など脇役達…

ロボットという思想~脳と知能の謎に挑む - 浅田稔

著者があとがきで「いかんせん(私は)工学出身なので説明が難しいかもしれません」と書いているとおり、素人の僕には良く理解できない記述もあり、途中で睡魔に襲われてしまうこともありましたが(笑)、ロボット工学についての理解を深めることができました。 …

「自炊代行」違法判決で思う事

いわゆる「自炊代行」が、著作権侵害に当たるかどうか争われた裁判で、東野圭吾さん、浅田次郎さんら7名の作家の主張が認められましたが、自炊代行を利用していた僕としては、残念な結果となってしまいました。 既に多くの方がブログ等でこの判決についての…

ななつのこ - 加納朋子

日常にある些細な謎をめぐる連作短編青春ミステリー。 短大生の主人公・駒子の日常出会う謎と、作中に出てくる『ななつのこ』という小説とが見事なまでに絡みあい、僕は今までに読んだ事のない新しさを感じました。ミステリーとしてはかなり異色の作品のよう…

いちばん大事なこと 養老教授の環境論 - 養老孟司

虫の分布が日本列島が変化してきた歴史と密接な関係を持っているというのは、ちょっとしたコロンブスの卵だった。 それにしても、いち早く都市化し森を草原に変えたイギリスでは、虫の標本を管理することができて、一方、自然と共生してきた日本ではそれが出…

壁 - 安部公房

若い頃読んだ本を自炊してiPhoneで再読。 人間の孤独と不条理を描いたシュールな短編集。名前を失った男の話(S・カルマ氏の犯罪)、影を喰われて透明になった男の話(バベルの塔の狸)、人々が液状化してしまう話(洪水)など、奇妙きてれつな話だけれど、…

単純な脳、複雑な「私」- 池谷裕二

ブックデータベースより 20年前に卒業した母校で、著者が後輩の高校生たちに語る、脳科学の「最前線」。切れば血の吹き出る新鮮な情報を手に、脳のダイナミズムに挑む。かつてないほどの知的興奮が沸きあがる、4つの講義を収録。 とても興味深く読みました。…

家守綺譚 - 梨木香歩

梨木香歩さんの作品はこれが2冊め。 前回読んだ『西の魔女が死んだ』とはちがった雰囲気の作品。でもゆったりと時間が流れる世界は同じものを感じる。 約百年前の明治を舞台とした物語。亡くなった親友の実家の守をすることになった青年の四季折々の植物と「…

毎日が日曜日 - 城山三郎

再読。これを前に読んだのは大学生のころだったでしょうか。その時この本を読んでどういった感想をもったのか忘れてしまいましたが、働くということがどういったことか実感がなかったあの頃と今とでは大きく違っているような気がします。 閑職に追いやられな…

算法少女 - 遠藤寛子

江戸時代(1775年)に出版された和算書『算法少女』にインスパイアされて書かれた少年少女向け小説。ひらがなの割合が多くてちょっと読みにくい所もあったけれど、とても面白く読めました。40年前の1973年に発表された小説とは思えない新鮮さを感じました。 …

聖痕 - 筒井康隆

現代文の中に古語や枕詞を多用した文章が異彩を放っています。一つの段落が異常に長いのも特徴。随分前に、筒井氏が「」付きの会話でどんどん改行しページ数を稼ぐのはけしからん、というようなことをどこかで書いていたような気がしますが、その主張を徹底…

科学の栞 世界とつながる本棚 - 瀬名秀明

100冊ほどの科学関連本を紹介した書評集。 それぞれの本の書評は、2ページ程度と短めなので、すいすいと読む事ができます。この本そのものが科学への興味をかき立て、知的好奇心を刺激してくれます。もっと知りたいという気持ちが芽生えるので、たとえここで…